VOL.678 失われた希望の地に響く声音
こんにちは、武中です。
ぼくの財布のひもを木っ端微塵にしてくれた、とある書店のおねーさん。しかし、いつのころか姿を見ることがなくなり、地上からは希望が失われて久しい今日このごろです。
とはいえ、本を読むことはぼくに残されたわずかな楽しみのひとつ。地上から希望は失われても、それが書店に行かなくなる理由にはなりゃしません。
ぼくは新刊コーナー、文庫本コーナー、ラノベコーナー、コミックコーナーを周回し、「狼と香辛料」を手に取りレジに向かいました。
「いらっしゃいませ」
この聴覚皮質に直接響くような声音…、釘宮! いや、もちろんただのバイトなのですが、そのあまりにも特殊な音域を駆使するこの新手のスタンド使いは、発声するたびにレジ周辺を異空間へと導きます。
これが、そういう土地のそういう店ならそういうこともあるよねと思ったりもします。しかし、ここはそんな特殊なニーズを満たすがために、存在しているわけではありません。
なんでもない普通の街の、なんでもない普通の書店で、いかにも書店でバイトしそうな地味な感じの女の子が釘宮風だったりするわけです。ふっ、やれやれ。この世界も、まんざら捨てたもんではありませんね。
どうやらぼくは、もう少しこの世界に残らなければならないようです。
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