06:たびびと

2008.04.22

VOL.684 そして、常春の風が吹く

 こんにちは、武中です。

 さて、冒険活劇八丈島探検記も第三回を迎えいよいよ佳境です。まだ、八丈島に着いてから5時間くらいしか経過していませんが、書いてるこっちあまりの進行の遅さに飽きてきましたからね。そら、佳境にもなろうってもんです。

 荷物を置き宿で一息をついたのですが、なにせ雨にぬれた身です。ひとっ風呂浴びたいと思うのが世の理というものです。しかし、ただ風呂に入るってのも芸がないので、ぼくはノートパソコンを取り出し携帯で通信開始。八丈島の温泉情報を調べます。ぼくはここだというところに目星をつけ、とりあえず宿の人にそこまでのタクシーをお願いしようとしました。
 すると、「温泉? それだったら、ウチのクルマで送迎しますよ」というではありませんか。ぼくは、「しからば、案内を頼む」というと、「もうすぐ、クルマが戻ってくるから、それまで部屋で待っててください。戻ったら、伝えますんで」というので、「心得た」といい部屋に戻りました。
 なんとなくゴロゴロと部屋で過ごしていると、クルマの音。宿の人から連絡が入り、ロビーに行くとクルマに案内されました。クルマは、白いバン。運転手は、30年前はお嬢さんだった宿の人の息子っぽい人。
 クルマに乗り込もうとすると、「あと、一人ですね? きたら、出発しますね」というじゃありませんか。来た、妄想スイッチオン。こりゃ、もう傷心旅行真っ最中の黒髪の乙女かなんかが、乗ってきて、まあ、なんちゅうか、旅、島、宿、温泉、ひゃっほー、というコンボに脳内メモリーの大半を使用していると、そのもうひとりの客とやらがやってきました。
 …どうしよう、ホントに女子が来ましたよ。ひとりですよ。なんで、こんなシーズンオフの八丈島に? 妄想は得意ですが、現実はちょいとぼくに荷が重い。戦えるのか、ぼくは?

「…こんにちは」
「…こんにちは」

 ふたりは、それぞれに冷たく黒い空気を放ちます。ただ、それは拒絶とは同意ではなく。

「八丈島は、よく来るの?」
「…3回目。この時期に来たのは初めて」
「人、あんまりいないね」
「そうね、シーズンオフだから。あなたは、なぜ来たの」
「…疲れていた、からかな」
「…そう、わかるわ。私も同じだもの」

 クルマはガタガタと山道へ。温泉へ向かっているのですが、ふたりの会話を聞いていると、このまま山ノ神に召されそうな雰囲気です。

「気がついたら飛行機おさえていたんだよね」
「そう」
「どこでもいいから、ただどこかへ行きたかったんだ」
「そういうときもあるわ」
「そういうものなのかな」
「そういうものなんだと思うわ」

 盛り上がっている、といえばその会話は盛り上がっているのですが、そのテンションは実に低いわけで。
 やがて、温泉に到着。1時間くらいしたら迎えにきますので」といって走り去った宿の車を見送り、ぼくらは、男湯、女湯に別れました。
 温泉はとても気持ちがよく、冷え切った体と心があたたまるかのよう。そして、きっちり1時間後に風呂をでて、帰りのクルマに乗り込みました。帰りのクルマでは、ふたりともほとんど話さなかったのですが、宿に着きクルマからおりるときにちょっとだけ会話。

「今は、人がいないこの季節がいいけれど」
「ん?」
「今度、来るときは冬じゃないといいわね」
「そうだね。それがいい」

「じゃあ」
「じゃあ」

 うーん、旅ってすごいですね。なんか、文学チックな感じでしたよ。というわけで、文学的にはこれ以上書き込むのは蛇足ってもの。八丈島編は、この辺でお開きってことにします。

 さて、今度はどこにいきますかねぇ。

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2008.04.20

VOL.683 雨 ときどき 幸せのリストランテ

 こんにちは、武中です。

 フフフ、今回は前回と同じく八丈島…、おっと「前回と同じ」ってのは失言でしたね。そう、今回は、八丈島旅日記~常春旅空純情恋物語編~とでもしましょうかね。さあ、期待しろ、愚民ども。

 そんなわけで、恋の花咲くときもなく、出会ったのは白覆面の魔王デストロイヤーくらい(前回参照)。天気は雨、失われる体温、古傷の左ひざは鼓動に応じてドクドクと脈打つように痛い。そして、空腹。しかし、歩けども歩けども店はなく、ぼくは苦行に耐える修行僧がごとく、ただただ歩きました。

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ハッピー食堂。

 砂漠にオアシス、八丈島にハッピー食堂。ぼくは、幸せそうなリストランテにてちょっと遅めのランチを取ることにしました。
 からからと扉をあけると、…店員がいません。と思ったら、厨房からぷるぷるしているダンディな店主が登場。ぼくは、大きな声ではっきりと「もやしそば」と注文。伝わったかどうか不安でしたが、ぷるぷると首を立てに振ったんで通じたようです。いやさ、通じたと信じたい。
 料理が出るまでの間、ぼくは「吉永さんとガーゴイル」をおもむろに取り出し熟読。しばしの後、もやしそば到着。

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もやしそば。

 冷えた体にあんかけが乗ったもやしそばは、実にありがたい。ぼくは、ずるりずるりとそばをすすり、ご満悦。そして、残さずすべて腹に入れた後、ぷるぷるした店主に「馳走になった」と飯代を払い外にでました。
 からからと戸を開けば、外は気持ちいい晴天。ハッピー食堂は、心もお腹も、そして空までも幸せに、なんてことはなく、やっぱり雨降りさね。
 ぼくはポケットから帝国華撃団謹製の懐中時計を取り出しました。時刻は、15時。チェックイン可能な時間です。宿までの距離はまだちょっとありましたが、腹も満ちたし、左ひざの状態も小休止で回復。少しスピードを上げて、宿へと向かいました。
 宿着。受付に行くと人はなかったので、「ごめん。今宵、こちらの宿に世話になるものだが」と声をかけると奥から30年前はお嬢さんだった人が登場。心のうちでは、「おいおいおい、キャスティングどうなってんの? ここは、あれでしょ。うら若き黒髪の乙女登場の巻でしょうが。まったく。それとも、なに? この人の娘さんでも登場するとかっていうシナリオ。いや、それならいいよ。でも、用意してないんでしょ。あのね、何年やってるのさ。旅、島、宿。そうきたら、恋でしょ、恋。これじゃ、「仲居は見た。八丈島連続殺人事件」とかになっちゃうよ。それじゃ、こまるでしょ」と思いましたが、グッとこらえてこのご婦人が年を忘れて惚れちまうくらいのとびっきりの笑顔で、「お世話になります」とご挨拶。だって、もしかしたらうら若き黒髪の乙女のお母様かもしれないじゃないですか。
 ってそんなことは、まったくないんですけどね。

 とまあ、大分長くなってしまったので、今日はここまで。…どこが「八丈島旅日記~常春旅空純情恋物語編~」なのかって? いやいや、今日は長くなってしまったから、そこまで語りきれなかったのですよ。大丈夫、まだまだ時間はありまさぁ。

 次回、乞うご期待!

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2008.04.16

VOL.682 荒れる海、降りしきる雨、そして

 こんにちは、武中です。

 春ですなぁ。というわけで、昨年末"常春の島”八丈島に行ってきた話しでも書こうと思います。なんでいまさら、と思う方もいるかもしれませんが、ぐたぐた抜かすと21世紀初頭の米国旅行記でも書くぜよ。こちとら、過去を振り向きっぱなしの人生を送ってるんです。この程度のバック・トゥ・ザ・フューチャーは日常茶飯事っていうんです。

 そんなわけで、羽田空港から飛行機で八丈島へ。明らかに観光シーズンではないため、八丈島の空港もどこか気の抜けた空気がただよいます。
 さて、チェックアウトまでの時間がけっこうあったので、宿に行く前に適当に島をぶらつくことにしました。とりあえずは、海へ。ウサギなら何度死ぬかわからないほどさびしい人生を送る人間が、足を運ぶとしたら海しかないですからね。てへ。
 そんでもって、ひたすら徒歩。とことん徒歩。なんにもなく、人も通らない道をひたすら歩きます。いい加減、飽きてきて「ぼくは、ホントに海がみたいのか? 答えは否。海を見たところで、何が心に残るというんだ」と心が後ろ向きになってきたところで、海に到着。世の中、よくできているね。

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ざぱーん。

 荒れてるねぇ。まるで、ぼくの心のようです。なんて思ったら、なんか雲があほみたいなスピードで広がってきてきます。まるで、ヘルマリイがまぬけ時空発生装置を作動させたかのようです。
 そして、雨。っていうか、豪雨。「ジャングルは晴れのちグウ」のオチがごとく土砂降り。ちなみに、傘などという文明の利器はもってるはずもなく、ぼくは釣具屋の軒下で雨宿りをしました。

Ame
著者近影。

 山の天気は変わりやすい。ぼくはその言葉を信じて、しばらくぼぉーっとしてました。しかし、常春の島とはいえ、雨に降られるとちょっと寒いです。こんなとき、美しきお嬢さんでもいれば、近くの洞窟にかけこみ裸で暖めあうとというステキイベントに突入でしょうが、ばってんここには洞窟などなか。残念、洞窟さえあれば…。
 でも、自動販売機はがんがん営業中なわけです。自動販売機から放出される熱が、冷え切ったぼくの体に熱を与えます。もう、ぼくには自動販売機しかいないわけで、これがちょっとした小粋なラノベなら、自動販売機が女人化すること間違いナシですが、残念、ぼくはどっちかていうとハードボイルドの人。自動販売機は、自動販売機に過ぎないわけです。夢のない、世の中だぜ。

 その後、降ったりやんだりの天候。ぼくは、止んでる時間に移動し、降り始めたら軒先で雨宿りという、ある意味旅情緒あるふれる移動スタイルを満喫。しかし、こんだけ雨宿りしてるんだから、1回ぐらい「雨宿り、ですか」「ええ、突然降ってきましたからね」「ええ、ホントに」「まだ、宿までちょっとあるけど、小ぶりのうち…」「あの、もしよければ、ウチきませんか」「えっ」「多分、この雨はもうしばらく続きますよ。だったら、少し休んでいったら」みたいなことがあってもよいと思うのですが、やっとの思いで遭遇したのがこんなの。

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白覆面の魔王。

 違う、断じて違う! ぼくが求めているのは、こんなネタ的な存在ではなく、常春旅空純情恋物語みたいのがいいの! なんで、「デストロイヤー」なんすか。うがー。

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