VOL.684 そして、常春の風が吹く
こんにちは、武中です。
さて、冒険活劇八丈島探検記も第三回を迎えいよいよ佳境です。まだ、八丈島に着いてから5時間くらいしか経過していませんが、書いてるこっちあまりの進行の遅さに飽きてきましたからね。そら、佳境にもなろうってもんです。
荷物を置き宿で一息をついたのですが、なにせ雨にぬれた身です。ひとっ風呂浴びたいと思うのが世の理というものです。しかし、ただ風呂に入るってのも芸がないので、ぼくはノートパソコンを取り出し携帯で通信開始。八丈島の温泉情報を調べます。ぼくはここだというところに目星をつけ、とりあえず宿の人にそこまでのタクシーをお願いしようとしました。
すると、「温泉? それだったら、ウチのクルマで送迎しますよ」というではありませんか。ぼくは、「しからば、案内を頼む」というと、「もうすぐ、クルマが戻ってくるから、それまで部屋で待っててください。戻ったら、伝えますんで」というので、「心得た」といい部屋に戻りました。
なんとなくゴロゴロと部屋で過ごしていると、クルマの音。宿の人から連絡が入り、ロビーに行くとクルマに案内されました。クルマは、白いバン。運転手は、30年前はお嬢さんだった宿の人の息子っぽい人。
クルマに乗り込もうとすると、「あと、一人ですね? きたら、出発しますね」というじゃありませんか。来た、妄想スイッチオン。こりゃ、もう傷心旅行真っ最中の黒髪の乙女かなんかが、乗ってきて、まあ、なんちゅうか、旅、島、宿、温泉、ひゃっほー、というコンボに脳内メモリーの大半を使用していると、そのもうひとりの客とやらがやってきました。
…どうしよう、ホントに女子が来ましたよ。ひとりですよ。なんで、こんなシーズンオフの八丈島に? 妄想は得意ですが、現実はちょいとぼくに荷が重い。戦えるのか、ぼくは?
「…こんにちは」
「…こんにちは」
ふたりは、それぞれに冷たく黒い空気を放ちます。ただ、それは拒絶とは同意ではなく。
「八丈島は、よく来るの?」
「…3回目。この時期に来たのは初めて」
「人、あんまりいないね」
「そうね、シーズンオフだから。あなたは、なぜ来たの」
「…疲れていた、からかな」
「…そう、わかるわ。私も同じだもの」
クルマはガタガタと山道へ。温泉へ向かっているのですが、ふたりの会話を聞いていると、このまま山ノ神に召されそうな雰囲気です。
「気がついたら飛行機おさえていたんだよね」
「そう」
「どこでもいいから、ただどこかへ行きたかったんだ」
「そういうときもあるわ」
「そういうものなのかな」
「そういうものなんだと思うわ」
盛り上がっている、といえばその会話は盛り上がっているのですが、そのテンションは実に低いわけで。
やがて、温泉に到着。1時間くらいしたら迎えにきますので」といって走り去った宿の車を見送り、ぼくらは、男湯、女湯に別れました。
温泉はとても気持ちがよく、冷え切った体と心があたたまるかのよう。そして、きっちり1時間後に風呂をでて、帰りのクルマに乗り込みました。帰りのクルマでは、ふたりともほとんど話さなかったのですが、宿に着きクルマからおりるときにちょっとだけ会話。
「今は、人がいないこの季節がいいけれど」
「ん?」
「今度、来るときは冬じゃないといいわね」
「そうだね。それがいい」
「じゃあ」
「じゃあ」
うーん、旅ってすごいですね。なんか、文学チックな感じでしたよ。というわけで、文学的にはこれ以上書き込むのは蛇足ってもの。八丈島編は、この辺でお開きってことにします。
さて、今度はどこにいきますかねぇ。
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